フェレットに逢ったよ






「お前、大きくなったよな」
――1年。
オレが消えてから、またこの世界に戻ってくるまでの間に
そのくらいの月日が流れていた。
「そうかなぁ?」
隣にいる繭がこちらを見上げながら言う。
「ああ」
そのしぐさのひとつひとつが女の子らしくなったと思う。
「胸とかな」
「うう〜」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にする繭。
「いやいや、オレは繭が胸大きくなってうれしいぞ」
「……恥ずかしいもぅん…」
うつむいてしまった。
ちなみにオレもちょっと恥ずい。
いつもなら自然に出るような軽口だが、今日はどうにも心の持ちようが違う。
オレがこいつを“繭”と呼ぶようになって始めてのデート。
なんかいろいろ、意識してしまうっぽい。
「さて、今日はどこにいくかなぁ。……ってやっぱあそこかな?
腹も減ったし」
「うん。てりやきバーガー♪」
「ああ、行こうぜ」


相変わらず繭はてりやきバーガーが好物なようだった。
3つほど平らげて、ご満悦だ。
かくいうオレもてりやきバーガーを注文した。
どうでもいいがポテトとか食えばよかったか。

まったりしたところで、商店街を散歩する。
「うーおなかいっぱい…」
「そりゃあ、あんだけ食えばな。……太るぞ?」
「うう〜…またそういうこという〜」
繭はちょっとほおを膨らませていた。
「でもおいしかったからいいもぅん……」
「まあ、そうだな。おいしいのはいいことだ」


しばらくオレたちは気ままに歩いた。
映画もいいけど、こうやって無目的に散歩するってのもなかなか悪くない。
陽光輝くおだやかな昼下がり。
「あ!」
繭は何か見つけたのか、とてとてと駆けていった。
その先には白い物体。
……フェレットだ。
「こーへー、こーへー」
オレも小走りにそこに行った。
「ふぇれっと」
「というか、何でこんなとこにいるのか。迷子か?」
オレは考えずにはいられなかった。
昔、繭が飼っていたフェレットの“みゅー”のこと。
みゅーが死んだとき、繭は大泣きしていた。
墓にみゅーを埋めたときもまた掘り返して抱きしめてたりした。
だから、心配だった。
今、みゅーとは違う別のフェレットを見て、泣き出したりしてしまわないかと。
……。
「……繭…」
「かわいい〜♪」
繭は見知らぬフェレットを抱き上げていた。
「でも迷子なら、飼い主の人に届けてあげなくちゃ」
フェレットを抱いている繭は笑顔だった。
ただ動物を愛でている彼女。
その姿はとても魅力的に感じられた。
……同時に後悔する。
泣き出すなんて、とんだ検討違いだ。
繭は成長している。
それは何も体だけじゃない。
心こそ立派に1人前になっていたのだ。
そんなことに気づかなかったなんて、我ながらバカらしい。
「ああ……。さて、時間もたっぷりあるし、
今日のデートコースはそいつの飼い主を探し歩くのに決定だな」
「うん♪」




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