5.エピローグの中のプロローグ


2人は立っていた。
――そばでは、ミリアとリースが寝ている。
テントの外だ。
こんなところで寝ているのは、2人で見張りをしていたからだろうか。
まぁ、あとでテントの中に入れてやろう。
――それよりも。
「アルザス。ネストレックは本当に星の表面を壊すつもりかしら」
星の表面の破壊――人類滅亡と同じ意味になる。
「……ああ。しかし、魔族本来の目的というより、人間へのうらみかもしれない。
「…………ふう」
フィーナは月を見上げた。
「ネストレックが……この計画をあたしに任せたのって、なぜかしら……」
月は、太陽の光で輝いている。
「お前の……テストだろうな」
…………。
「やっぱり……そう思う? これがあたしを試すテストだと」
彼女の声は、低かった。
感情を押し殺したような。何かを水面下へ追いやったような。
「ネストレックは……役立たずや、自分にとって害になるものは
 全て抹消する……あたしがその対象かどうかのテスト。
 ――でも、あいつのやること自体、全てまちがってるわ。
 だいたい、魔王様の残した命令は“自分が帰るまでおとなしく”ってことだったのよ」
「しかし、魔王様も非常に賢いお方。ネストレックの行動くらいお見通しのはずだ。
 何かお考えがあるのだろう」
たき火が、もうそろそろ消えはじめた。赤き火は力なく萎縮している。
「考え? ……なんの考えだっていうのよ!
 なんとかしないと、セレスもミリアも死んじゃうのよ!
 魔王様は……何考えてるのよ!」
萎縮を続けていた炎が、赤が、闇にとける。
「……それで……どうするのだ? おまえは。
 奴らを助け、自分が死ぬか。
 自分が助かり、奴らを死なすか……
 おまえ次第だ」
アルザスは、フィーナの方を見ずにそう言った。
「……あたしは……命が惜しい……」
――でも、セレスとミリアの命も大切だ。
しかし、そんなことは言わなかった。
むやみに、そんなことを言ってはならない。
ネストレックに聞かれてはならない。
「……くっ……」
フィーナはうつむいた。
切ない思いを心に浮かべながら。
(魔王様……はやく……はやく……帰ってきてください……
 私とあなたが大事に思っているセレスとミリアが……
 2人が死んでしまいます……)
彼女の瞳からこぼれ落ちた水晶は、誰に知られることなく、大地に壊され、
跡形もなく散った。
(……とりかえしのつかなくなる前に……はやく……)
心から、彼女は思う。
――そんなフィーナの後ろ姿を見ながら、アルザスはある計画を組み立てて
いくのだった。

魔界についた時、すべてが動きだす。

――― END ―――

 

 

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